舌下免疫療法

舌下免疫療法とは

舌下免疫療法とは舌の下にアレルゲンが含まれた薬を投与する治療を継続的に行うことでアレルギー反応を起こさない身体に導いていく治療法です。薬物療法やレーザー治療などと違い、微量のアレルゲンを摂取して慣れていくという根本的なアプローチで治療を進めます。
原因となるアレルゲンが確定診断されて初めて舌下免疫療法が可能になります。現在はスギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法が可能であり、どちらも5歳以上が適応となっています。少しずつ慣れていくという治療法であり、治療は3~5年程度かかります。
なお、ダニアレルギーの舌下免疫療法はいつでもスタートできますが、スギ花粉アレルギーの場合はスギ花粉飛散時期に舌下免疫療法をスタートさせることはできません。スギ花粉アレルギーの舌下免疫療法は、6~11月の期間にスタートさせます。また、妊娠している方、妊娠を希望されている方は治療開始できませんが、舌下免疫療法の治療をスタートさせて増量期から維持期に入ってからであれば妊娠が可能になります。

皮下免疫療法との比較

微量のアレルゲンを長期的に摂取する減感作療法では、以前からアレルゲンを注射する皮下免疫療法が行われていましたが、多くの通院が必要というハードルがありました。舌下免疫療法では初回こそクリニックで投与する必要がありますが、それ以降は自宅での投与が可能です。舌下免疫療法は一定の効果が報告されていて安全性も高く、幅広い方が気軽に続けられる治療法になっています。

舌下免疫療法の特徴

  • 注射の必要が無く痛みが無い
  • 皮下免疫療法に比べると通院回数が少ない
  • 自宅で投与できるので続けやすい

舌下免疫療法で
効果が見込めるアレルギー

現在、スギ花粉アレルギー専用の舌下免疫療法薬、ダニアレルギー専用の舌下免疫療法薬があり、スギ花粉アレルギーとダニアレルギーに関しては保険診療として舌下免疫療法が可能です。事前にアレルギー検査を行って、スギ花粉またはダニのアレルゲンがあるかを確定診断して初めて治療が可能になります。当院では血液検査でアレルゲンを調べています。

舌下免疫療法を
受けられる方

  • 5歳以上・65歳未満
  • アレルギー検査でスギ花粉症またはダニアレルギーと確定診断された

こんな方にお勧め

  • 毎年、花粉飛散時期にとてもつらい思いをしている
  • 今後もずっとアレルギー薬を飲み続けるのに不安がある
  • 将来、妊娠などで有効な治療薬が使えなくなることが心配
  • 治療薬で集中力が低下して学業・仕事・スポーツで実力を発揮できない
  • 受験シーズンに花粉飛散時期が重なって気が重い

舌下免疫療法を
受けられない方

  • 気管支喘息があり、重症で安定していない
  • ダニやスギ花粉ではないアレルゲンでアレルギー性鼻炎を発症している
  • 妊娠中、または妊娠を希望されて妊活している
  • 重度の心臓病がある
  • β阻害薬を内服している
  • 膠原病などでステロイドを内服している
  • 重篤な全身性疾患がある

※高齢者やダニやスギ花粉のアレルギーがあってさらに他のアレルゲンにも高い反応がある場合は、舌下免疫療法の効果を十分に得られない可能性があります。それをご理解された上で舌下免疫療法を希望される場合はご相談ください。

治療の流れ

1血液検査

スギ花粉やダニがアレルゲンかどうかを検査で確定診断する必要があります。舌下免疫療法を希望されている場合には、血液検査を行っています。約1週間後に結果が分かります。なお、採血が難しい子供の検査では、20分で判定できる簡易検査を行うこともあります。
※他の医療機関でアレルギー検査を受けている場合、検査結果をご持参ください。ただし、3年以上前の検査結果などでは、再検査が必要になることもあります。

2判定・治療のご説明

血液検査の結果から、スギ花粉・ダニの舌下免疫療法が可能かを判定します。
可能と判断された場合には、舌下免疫療法について分かりやすくご説明します。通院スケジュール、生じる可能性のある副作用、投与に関する注意事項などもしっかりお伝えしています。ご不明点がありましたら、何でもお気軽にご相談ください。
舌下免疫療法についてご理解いただいた上で治療を希望・検討される場合は同意書をお渡しします。治療を希望される場合には記入した同意書を次回の受診でご持参ください。
※スギ花粉とダニの舌下免疫療法を両方行うことは可能です。ただし、同時スタートはできません。症状が強い方の舌下免疫療法を先に行って、状態が落ち着いてきたら残りの方をスタートします。

3初回治療

舌下免疫療法の受診には予約が必要です。
記入した同意書を提出いただいたら、舌下免疫療法開始となります。診察で投与について再び分かりやすくご説明します。診察後、受け取った処方箋を持って薬局で舌下錠を受け取って当院に戻り、舌下錠を当院で服用します。舌の裏に薬を置いて1分間経過したら飲み込みます。服用後、5分間は飲食禁止となっています。服用後、30分経過したら再度診察して副作用が無いことを確認し、診察終了となります。
診察⇒薬局⇒当院で舌下錠投与⇒30分後に再診察という流れです。
院内投与は初回のみで、翌日からは自宅での投与となります。

4受診

初回治療から1週間後に診察を受けます。副作用など問題が無いことを確認して治療スタートとなります。毎日決まった時間に自宅で投与し、薬が無くなる前に受診してください。毎月、1回の受診が必要であり、治療は、3~5年続ける必要があります。
※スギ花粉症の舌下免疫療法は花粉が飛んでいない6~11月の時期に治療をスタートします。ダニの舌下免疫療法はいつでも始めることができます。

舌下免疫療法の有効性

舌下免疫療法の有効性舌下免疫療法を受けた約8割の方が症状が改善していると報告があり、ある程度の効果が実感できるまでには治療開始から数か月かかります。スギ花粉の場合は10月治療スタートでも次の花粉飛散シーズンに症状の軽減が期待できるとされています。
長期間しっかり治療を続けることで症状の改善やアレルギー症状緩和のための治療薬の減薬が期待できます。治療期間は3~5年となっています。
ただし、全ての方が効果を得られる治療法ではありませんので、1年程度治療をきちんと続けても効果が無い場合には治療の継続を医師と相談します。

舌下免疫療法の副作用

約5割の方に副作用が現れるとされています。副作用は口内のかゆみやのどの違和感程度と治療の必要が無く、1か月以内で落ち着くものが多くを占めています。気になる症状がある場合には抗ヒスタミン薬を処方します。
なお、国内では舌下免疫療法による重篤な副作用が報告されたことはありませんが、アナフィラキシーが起こる可能性もゼロではありません。気管支喘息の発作・蕁麻疹があった場合には治療中断と経過観察を行って慎重に治療の継続を検討する必要があります。こうした症状が現れやすいのは、投与開始初期、投与30分以内、スギ花粉飛散時期です。この時期には特に経過をしっかり確認しましょう。

治療を始める前の
確認事項

  • 3年以上の治療継続が推奨されており、長期間の治療が必要
  • 毎日継続してきちんと投与し、毎月1回は受診が必要
  • 全ての方が効果を得られる治療法ではない
  • 投与後、5分間は飲食禁止
  • 副作用が生じる可能性がある

舌下免疫療法のQ&A

舌下免疫療法ではどんな治療をしますか?

アレルギー症状の原因となるアレルゲンを少量ずつ投与して身体をアレルゲンに慣らしていく治療法です。長期間続けることでアレルギー症状を和らげる効果を期待できます。対症療法ではなく、根治に繋がるアプローチを行います。

どんなアレルギーに効きますか?

現在、スギ花粉症とダニによるアレルギー性鼻炎に適応があり、保険診療で治療を受けられます。ハウスダストアレルギーがある場合、そのほとんどはダニアレルギーによって生じています。ハウスダストアレルギーの場合も、血液検査でダニに対するアレルギーが確定診断されたら治療可能です。

年齢制限はありますか?

当院では下記の治療薬を処方しています。
スギ花粉症: シダキュア(鳥居薬品) 
ダニアレルギー: アシテア(塩野義製薬)・ミティキュア(鳥居薬品)

どんな治療を、どのくらいの期間続ける必要がありますか?

毎日、舌の下に薬を置いて1分後に飲み込みます。治療期間は3年以上、推奨期間は4年~5年となっています。治療期間が短いと治療終了時にはある程度効果があっても持続しないとされています。

治療をスタートする前に検査が必要ですか?

血液検査でスギ花粉やダニによるアレルギーがあると確認する必要があります。当院では、RASTやVIEW39という検査を行って確定診断しています。

治療ができないケースもありますか?

妊娠中・近いうちに妊娠を希望されている妊活中の方は治療を開始できません。重症の安定していない気管支喘息・重い心臓病がある場合も、舌下免疫療法はできません。また、β阻害薬やステロイドを内服している場合は舌下免疫療法ができませんが、薬を変更することで可能になる場合もあります。

通院はどのくらいのペースで続ける必要がありますか?

治療をスタートしたら最初は1週間で再診します。その後は2週間ごとに受診して問題が無く、安定した維持期には4週ごとの毎月1回という頻度での通院となります。

治療のスタート時期に制限はありますか?

ダニアレルギーの場合はいつでも舌下免疫療法をスタートできます。スギ花粉アレルギーの場合は、スギ花粉飛散時期に舌下免疫療法をスタートすることはできませんので、スタートは6~11月の期間となります。

費用はどのくらいですか?

医院での治療費と薬局での薬代と合わせて1ヵ月あたり約2,000~2,500円程度の負担(保険適応3割負担の場合)になります。1年を通じて治療をしますので毎月ほぼ同額の治療費となります。

種類 1錠当たりの目安の費用
シダキュア舌下錠 2,200JAU 58.5円/錠
シダキュア舌下錠 5,000JAU 146.1円/錠
ミティキュア舌下錠 3,300JAU 66.5円/錠
ミティキュア舌下錠 10,000JAU 200.8円/錠

実際に5歳でも治療を開始できますか?

5歳以上であり、舌の下に薬剤を1分間置いてから飲み込み、5分間は飲食しないという投与が可能であることが条件となります。5歳で可能な場合もありますが、きちんと続けなければ意味がありませんので一般的には小学校入学後に治療をスタートさせることが多くなっています。

治療中は他の薬を飲めますか?

舌下免疫の治療を受けている間も、アレルギー症状が出たらこれまで使ってきた治療薬を服用できます。ただし、ステロイドの内服は控えるなど幾つかの制限がありますのでご相談ください。

舌下免疫療法の
効果について

スギ花粉症

舌下免疫療法を続けてスギ花粉飛散の2シーズンを経た際に行われた調査では、症状が無くなる寛解は17%、症状改善は67%と報告されています。

ダニアレルギー性鼻炎

舌下免疫療法をスタートして早い場合は3か月頃に効果が現れ始め、1年経過すると22%の方に症状改善がみられるとされています。患者様の評価としては、「良いと思う」「少し良いと思う」が80%を占めています。

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